やるべきなのはむしろ法人税の引き上げと消費税の引き下げです

「消費税を上げて法人税率を下げるのは大企業優遇」という幼稚すぎるとは随分煽りますね

ダイヤモンドオンラインの「消費税を上げて法人税率を下げるのは大企業優遇」という幼稚すぎる議論と、まあ結構煽ってくださる記事がありました。率直に言ってこちらの方が株主第一とする幼稚すぎる議論としか言いようがありません。

前回の当コラムで少し触れたが、来年の消費税率引き上げとあわせて法人税引き下げの検討を安倍総理が指示した、との報道が「日本経済新聞」(8月13日朝刊)に出た。この報道については菅官房長官や麻生財務相が否定しており、今の段階で消費税率の引き上げとセットにして本格的な法人税率の引き下げを検討しているということはないようだ。

 ただ、消費税率の引き上げが大きな注目を浴びているときに、法人税率の引き下げが話題になったということは興味深い。消費税率だけを他の税金と切り離して議論するのは、本来は適切ではない。

 消費税、法人税、個人所得税、資産課税など、さまざまな税があるとき、税全体の体系がどうあることが好ましいのかという視点から、消費税率についての論議が行われることが望ましいからである。

 膨大な公的債務を抱え、さらには急速な少子高齢化が進展するなかで、日本の財政運営は非常に厳しい状況が続く。かなりの税収増加を生み出すような増税が必要になると考えざるをえないが、それはどのような税でどれだけ税収を確保するのか、という税配分の問題につながる。

 特に、多くの国で、一方で消費税率(付加価値税率)が引き上げられ、他方で法人税率が引き下げられる傾向が顕著ななか、日本としても消費税率の引き上げと法人税率の引き下げをセットで行うべきかどうかについては、当然もっと議論を進めるべきである。

「消費税は国民一般、特に庶民に税金を課すものである。法人税は企業、特に利益をあげている大企業に課すものである。消費税率を上げて、法人税率を下げていくのは、国民をいじめて大企業を優遇するものである」──こうした意見を聞くと、経済がわかっていない小学生のような議論だと言いたくなる。

 経済は複雑な体系である。法人税率によって企業行動がどう変わり、それが雇用や経済活力にどのように及ぶのか、マクロ経済全体としての思考が必要だ。そのうえで、消費税と法人税のどちらでより多くの税収を確保することが、国民全体にとってより好ましいことなのかを議論しなくてはいけない。

 ただ、残念ながら、現実の税に関する議論は小学生レベルの単純な見方が強い影響を及ぼしがちである。それゆえ、日本ではなかなか消費税率を上げることができなかった一方で、法人税率は世界有数の高さのままなのである。

https://diamond.jp/articles/-/40667

大企業優遇と受け取られるのは経団連が主導のためですが

厳密に言えば、大企業優遇というわけではありません。優遇されるのは純利益率が大きい企業です。法人税は利益から経費や投資高、営業外損益を計上した後の純利益に対して課税するものです。反面、株主への配当金の原資は原則的に純利益から拠出されます。

また、中小企業は大企業との間での価格競争では不利になりがちなので、増税分を価格に転嫁しづらくなってしまいます。価格に転嫁できないと売上利益自体を蝕んでいくことになります。結果として相対的に大企業有利に働きもします。

純利益率が大きい、一見効率よく儲けているように見えがちですが、そうとは限りません。労働者の賃金を低く抑えたり、設備や技術への投資を渋って純利益を絞り出すこともできるからです。
元々法人税の意図の一つとしてあるのは心理効果で投資を促す効果にあります。純利益を多くあげた所で、法人税で持って行かれるぐらいなら、労働者の賃金や設備・技術への投資に回した方がよいというふうになるからです。

これに逆行する形で大企業の経営者集団とも言える経団連が推し進める理由は株主配当を最優先しているからです。
もっとも大企業の経営者も株主総会に任命された立場上、株主の利益に沿わなければ解任されてしまいます。そのため株主の利益のため、配当金の原資を確保しようと賃金や投資を抑えるという緊縮経営で純利益を引き出そうと考えるでしょう。

消費税の引き上げは法人税の引き下げに対する補填策

法人税引き下げを求められても、税収が減って財源が足りなくなると財務省が難色を示すでしょう。
(そもそも税収が減って財源が足りなくなるという考え方自体も誤っています。)
そこで対案として消費税を引き上げるというのです。もちろん消費税を引き上げると企業の負担も増えますが、推進する側としては投資まで切り詰めて純利益を生み出している(投資を削ればその分に含まれる消費税も減る)ので、法人税の引き下げによるメリットの方が大きいのでしょう。輸出産業に至っては、輸出した商品の製造原価に含まれる消費税分が還付されるという「輸出戻し税」で利ざやを得ることもできます。
そこは大企業と言えど、国内消費に依存する小売業などは明確に業績が悪化するのを懸念して反対の意見もありました。

表向きは福祉財源の確保などと導入当初から言われておりましたが、実態は消費税の引き上げは法人税の引き下げと相殺される形で補填になってしまっています。
ただし、消費税の引き上げと法人税の引き下げは同時ではなく、法人税の引き下げの方が後に来ます。
だって、同時にやったらバレバレじゃないですか

政権党の自民党は経団連の言いなり

消費税の引き上げ反対の声というのは本当は広くあり、一般の生活者のみならず、中小企業もそうですし、大手の小売業にまで及びます。にもかかわらず、あっさり進められてしまいました。

圧倒的な議席数を持つ政権党の自民党が経団連の言いなりだからです。何故こうも言いなりなのかというと、経団連から企業献金の斡旋を受けているからです。お金もらってるんですから逆らえないでしょう。
かつての経団連会長の奥田碩氏は「カネで政策を買う」と言っていました。明らかに買収目的で献金しようとしていたのが見て取れます。つまり自民党は企業献金によって経団連に買収されているのです。
この時点で自民党は国民ではなく、経団連の方を向いて政治をやっているわけなのです。

今やるべきなのは逆に法人税引き上げと消費税の引き下げ

不況・デフレ脱却のためには消費税を下げて購買力を高めないと

今日の経済状況が芳しくないのは国民の所得の低下し購買力が弱いことにあります。消費税の引き上げることはますます購買力を下げることになります。
ざっくり言ってしまうと、1年間に支払っている消費税=約1ヶ月分の収入ぐらいの負担があります。

私も試算してみましたが、手取り月平均20万円の収入で、生活費で支出している消費税は年間で約18万円ほどになります。消費税が半分になっただけでも定額給付金1回分に相当する効果出るわけなんですよね。
消費税は逆累進性があり、所得が低いほど負担率が高くなります。それを考えると消費税の引き下げは負担率の高い低所得者ほど恩恵を受けやすくなると言えます。
低所得者ほど本当は買いたい物があるけれど、お金がなくて我慢しているということが多いので、こちらに恩恵のある経済政策をとれば購買力が伸びるため不況解消の方向には有効となるはるはずです。

法人税を引き上げると投資が増える

経済成長するには、投資は欠かせません。投資しなければ製品は陳腐化し、取り残されてしまいます。
フォード社も生産性を向上することには投資したかもしれませんが、新製品の開発にはまったく投資していこうとはしなかったので製品が陳腐化し、新製品を打ち出したGMやクライスラーの新製品にとって代わられ、業績は悪化していきます。
生産性の向上と言っても、例えばペンキが早く乾くからという理由でそれまで何色かあったラインナップから黒一色だけにするとかいうものです。
然るべき所に投資していかないと企業にとっても首が絞まるということでもあります。

法人税は大して投資もせずに儲けた企業にペナルティーとしてそれで儲けたお金に対して税負担を重くするという投資促進税制とも言えます。
税金で持って行かれるぐらいなら、労働者の賃上げや投資に回した方が良いと考える、これが法人税の狙いです
企業が成長するためにも投資が促される方向に向いている必要があるという面では法人税引き上げは有効です。

そして一番の問題は「日本は成長しない」という成長否定論者によって国内への投資マインドを底冷えさせたことではないかと確信します。経営者も「日本は成長しない」と思っていたら国内事業には投資しようとはしないでしょう。当然投資しなくなったことで尚更出た利益を持っていかれないよう法人税を下げよとなってしまいます。

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